血を吸う大地ッ!!

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苦く複雑な"レガシー"の継承『ファルコン&ウィンターソルジャー』S1EP5をザックリとレビュー

我を失ったジョンと対峙するサムとバッキーだったが…

オススメ強度:★★★★★

前回、戦友を眼前で亡くし、我を忘れて公衆の面前で暴力に身を委ねてしまったジョン・ウォーカー。

カリを追跡する途中でサムとバッキーと合流した物の、改めて「盾を持つ資格は無い」と諭されてしまうジョン。しかし、意固地になったジョンが聞き分けるハズも無かった。カリという共通の敵すら忘れ、工場内で対峙するジョンとバッキー&翼。

スティーブやイザイアに投与されたそれと違い、現代技術で改良された超人血清の影響は凄まじく、機械的に強化された2人組vsほぼ生身の1人という状況すら覆し、サムとバッキーを圧倒するジョン。次第に攻め手が過激になるジョンを前に、サムとバッキーは止むを得ずドギツいお灸を見舞う事になる…

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※ネタバレ注意!

残す所、あと一週で最終回となる『ファルコン&ウィンターソルジャー』。前半はジョンの失脚とシールドの奪還、イザイアの辛すぎる戦争体験と人種迫害を通じて揺れ動くサムの姿を捉え、更に後半はサムの姉家族とバッキーとの絆に迫る二部構成。前半、イザイアの独白やジョンの葛藤はとにかく複雑で苦々しい。一方、来週には最終回なのに後半の内容はまさかの日常アニメみたいな和やかさ。胸の内で揺れ動く物があったサムとバッキーが、シールドを互いに投げ合いながら段々と打ち解けていくシーンに心打たれる。王道だけど、こういうのに弱いんだなぁ…みつを()

イザイアの独白がとにかく辛過ぎた…朝鮮戦争では、多くのアフリカ系アメリカンが戦地に投入されたと聞く。一方で'40~'60年代のアメリカは人種差別による隔離が今より凄まじく、バスやトイレ、レストランであっても「こっちは白人様専用、あっちは有色人種用」という風に分かたれていた。これらの隔離を守れなければアフリカ系住民の命の保証は無く、しかも武器や銃器で過激な私刑をしても「白人なら自動的に無罪」であった為、次第にアフリカ系の公民権運動が全米で大きなうねりになって行った経緯がある。

(↑アメリカで白人至上主義者やKKKといった過激派組織によるアフリカ系への暴力を紐解くアーカイブ集。※あまりにも残虐なので覚悟した上でご覧下さい!!)

イザイアは朝鮮戦争から帰還してムショに投獄されたが、その理由は命令に背いた軍規違反による物だったそうだ。しかし、イザイアは仲間を助けたい一心だった一方で、軍と政府は超人血清の秘匿に躍起だった為、当時の人種差別的な世相もあり、イザイアは体良く実験材料として利用され続ける事になる。

過去に退役軍人と向き合っていたとは言え、イザイアの想像を絶する戦争体験を前にして言葉を失うサム。同時に「ブロンドで青い眼をした白人から盾を引き継いでどうする?」「世間は黒人のキャプテン・アメリカなぞ認めない」と言い切るイザイア。サムは逡巡したまま、イザイアの家を後にする。

ジョンの行方も見逃せない。戦争大国とも呼ばれるアメリカ。しかし若い軍人達が正義を掲げて戦ったにも関わらず、いざ戦地から母国に還ってみればフツーな日常を維持できず除け者扱いされ、マトモな賞与すら受け取れず、多くの兵士達が路頭に迷っていった。ジョンが辛辣な罵声を浴び、更に委員会で声を荒げる場面には、ジョンに扮するワイアット・ラッセル本人の本音も交えつつ、多くのアメリカ兵士のメタファーもあるような気がする。

「スティーブも俺も、アフリカ系のお前に盾を授ける事がどれほどの事を意味するのか解っていなかった」と率直にサムへ語り掛けるバッキー。サム、バッキー、ジョン、そしてカリ。NYCが不穏になる中、それぞれの正義が燻り始める。

 

決意を新たにするサムとバッキーの姿に震える

心中複雑ながら、少しずつ気持ちを整理してみようと姉サラに語ったサム。かつて馴染みだった知り合いにボートの修理を頼むサムの姿に、当初ボートを手放すつもりで居たサラの心も揺れる。

一方、地図から消えたソコヴィアの地でジモと再会するバッキー。謝罪を述べるジモをその手に掛けるかと思いきや、バッキーはエヨ率いるワカンダの精鋭にジモの身柄を引き渡す。ついでにサムに対して色々思う事があったらしいバッキーは"手土産"片手にサムの元へ向かう。

ボートの修理をしつつ、かつて互いにメチャクチャいがみ合っていたバッキー&翼が心通わせる終盤の描写にが止まらん(  ;∀;) 盾の継承について忠告するバッキーに対し、「自己満な復讐じゃなく、他人の力になってやれ」と語るサム。

そして「そのノートにひとりぐらいケジメを付けてやれそうなヒトがいるだろう」とサムがバッキーに語るカットが、かつてのスティーブとサムを想い出させてまた。またサムとバッキーが、サラの子供たちと顔を合わせるカットも、これまでのMCUじゃ考えられない程の穏やかさで新鮮だった。

"手土産"だけ渡してサムの元を後にするバッキー。その後にサムが黙々と盾の修練を積むカットから、何でかコーチ・カーターが想い出させて胸が熱くなる。

キャプテン・アメリカの盾という象徴的な遺産の継承を、超ヒロイックでは無く、切なくて泥臭く表現した製作陣のセンスにとにかく脱帽の一言。カリ+バトロックの因縁コンビ、水面下で動くシャロンや第三勢力、不穏な様子のジョン、決意の新たにしたサム、そしてバッキーのふたり。来週の最終回を括目して待ちたい。