今週のお題「下書き供養」
色味が独特過ぎるゾンビ型ロード・ムービー
オススメ強度：★★☆☆☆
Netflixで絶賛配信中。ヨーロッパ映画みたいな朧げな雰囲気だが、舞台はヨーロッパじゃない。
- 起承転結はハッキリしている方が好き
- ハリウッド映画、日本のアニメの様なエンタメ作品をよく見る
- ぼんやりした空気感がキライ
- 道徳の教科書みたいな、大人向け絵本はもっとキライ
上記チェックにひとつでも当てはまる項目がある場合、本作はオススメ出来ないかも。
ゾンビ映画かつ群像劇であり、ゾンビのせいで文化レベルが後退しちゃってる片田舎を写した、ある意味ロード・ムービーの様な側面もある。『ゾンビ+旅』ジャンルの映画は結構人気で、コミカルな雰囲気のタイトルも多いんだが、本作はその点最初から最後まで超シリアスである。
止むに止まれず、家族を殺した少年ティキュル。片足にキズを負いながらも逃げ続ける老人レアル。森の中を監視するボニンとヴェズナ。ナタを片手にゾンビを討伐しつつ、街を横断中のセリーヌ。「手のキズは犬に噛まれただけ」と自称するタニア。
ゾンビの数は増え続け、しかもヤツらの追跡はより狡猾になっていた。わずかな情報を頼りに、生存者たちは国道を沿って街を目指すが…
前知識無しに視聴。何考えてんだが分からない、挙動不審で動きのメリハリがやたら激しいゾンビ達の不気味さだけ観れば、結構良い感じ。本編を観た後で予告編を観たんだが実際の雰囲気はコレより遥かに地味。話の運びも、世紀末の最中にしては結構のんびりした物である。ゾンビ物だったら内容が何であれ好きな方だが、本作の独特な作風について、正直に言うとやや馴染めなかった感あり。
殺伐とした中で、場を和ませようとしてスベりまくる丸眼鏡+スキンヘッド+髭というスタイルの主人公ボニン。何故かナタを装備し、玄人めいた覚悟でゾンビを駆除するセリーヌ。それと傷を負ったレアルと、彼を案じるティキュルの四人はお気に入りになった。
一方、途中から仲間になるタニアが年齢の割に子供みたいな振る舞いで、正直好きになれなかった。いやタニアさん、アンタなんでそんな世間知らずのままで今日まで生き残れてたんスか…
キャラクターの造形は全体的にイマイチと感じる。老いた御婦人二人組を切なく描く一方、ゾエとタニアは掘り下げが足らず、ただの付き添いになってしまっている。バーサーカーみたいなセリーヌは、仮面家族から解放された結果あんな風になったと考察出来そうだが、終盤でナタを振り回す闘いは何と言うか、簡単に言えばやり過ぎ。オチも何となく消化不良。一応はハッピーエンドか。
音を頼りに、影の如く忍び寄って来るゾンビの描写は凄く良い。生きていた頃の記憶でもあるのか?日用品やおもちゃ類、ガラクタを積み上げた謎の塔も、目的や意図が不明で気味が悪い。後述するが、舞台となった田舎町のロケーションは素晴らしく、異国情緒に溢れ、ホントに目の保養になった。バロック調(?)と言えば良いのか分からないが、陰影の描き方も大変独特で印象強く、仮に本作がモノクロ映画でも画は映えただろう。特に納屋で生存者がソファに集まるカット、それと水浸しの地下道で、ゾエがたったひとりしゃがみ込むカットにはシビれた。
作風がどうあれ、ゾンビ物なら観ずにいられないマニアにはオススメか。
さっきヨーロッパみたいだな…とは書いたけど
「コレ何語?フランス語かなぁ??」とは思ってはいたが、ロケ地となった舞台はヨーロッパでは無くカナダのケベック州であり、キャストも製作陣も生粋のカナダ人という事実にまず驚く。カナダは今でもフランス領時代の色が、地域によって未だ根強く残っており、特にケベック州の周辺になると標識や看板もフランス語で、英語でのコミュニケーションが全く通用しなくなるレベルらしい。(※ウィキペディア調べ)
フランスが支配した植民地地域を指して『ヌーベル・フランス』という言葉もある。カナダのケベック・シティーは、当時の北アメリカ大陸を占領していたフランス領の、主要最大都市だったんだって。(※ウィキペディア調べ) まぁ、こういった世界史すら自分はこの映画を観るまで全く知らなかったので、その点かなりタメになった一作と言える。
それとカナダという土地で、しかもゾンビ映画というジャンルながら、決してアメリカナイズされる事無く、ヨーロッパのテイストが色濃い映画が製作された点もまた面白い。
あらすじ、全体の色味や雰囲気、なかなか個性的なキャスト達。良くも悪くもハリウッド映画からかけ離れたスタイルで面食らったが、カナダ映画にはコレもあるのだと、記憶に留めておきたい。
