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フォレスト・ウィテカーの気色悪さに震えろ!!『レポゼション・メン』をザックリとレビュー

SF的な記号より、依存が強い同僚のキモさが際立つ大怪作

オススメ強度:★★★★★

※ネタバレ注意!

カナダ、米国で共同製作された2010年公開の悪趣味なSci-Fi映画。俳優陣の演技力や表現は流石の一言。特にジュード・ロウとアリシー・ブラガの表情に吸い込まれてしまう。更にオチのどんでん返しから「近代でも稀な、最もショッキングなバッドエンド」との評もある一方、「ジュード・ロウ主演の映画は、批評家ウケこそ良くてもコケる」というジンクス通り、そこそこな製作費に反して劇場興行では全く振るわなかった一作。

SDGsとかESG投資とか、「持続可能社会を目指そう!」「人権を尊重した経済活動!」「海賊的な経営をする会社を追放しよう!」とか、11年前の映画にして近年の経済や環境社会の世相を予見したかの様な、鋭いメッセージもあるにはあるんだがぶっちゃけそんな事がどーでも良くなるぐらい共演のフォレスト・ウィテカーがキモ過ぎ、怖過ぎなのだった。

人工臓器の世界的製造メーカーであるユニオン社は、臓器を欲しがる顧客にローンを勧めている。しかし、消費が旺盛な客はローンの返済能力など当然無い。ユニオン社に務めるレミー(ジュード・ロウ)とジェイク(フォレスト・ウィテカー)の二人は、ローンが滞った場合、客の元へ赴いてそのカラダや頭を斬り裂き、内蔵や眼球を容赦なく"取り立て"る。

人工臓器を勝手に摘出された客が"取り立て"の後に死のうがレミー達は知ったこっちゃ無い。現代の死神みたいな仕事にレミーとジェイクは誇りを抱いていたが、ある日機材にトラブルに生じてしまい、レミーは昏睡状態となってしまう。

目覚めると、本人の意志も構わず、人工心臓を埋め込まれた事を知るレミー。ミイラ取りが思いがけずミイラに… ローンに追われる中、自分の仕事がどれ程ヤバいか誰よりも知るレミーは全く仕事が手に付かなくなってしまった。円満だった家庭生活は途端に崩壊、かつて同僚だったジェイク達も、今度は執拗な"取り立て屋"としてレミーに迫る…

原作はエリック・ガルシア氏の"Repo Men"で、劇場映画製作にあたりエリック自身も共同脚本担当として参画。借金取りが、逆に借金でクビが回らなくなったら?というありきたりな筋書を、近未来的な空気感とザラザラした質感でまとめ、時に儚く、時にシニカルに描いた傑作SF映画。客の返済状況を確認しつつ、スタンダーツを高速で撃ち出せる銃型デバイスが印象的で、大量のダーツが飛び交い、スラムの住民達がバタバタ倒れる中、レミーとべス(アリシー・ブラガ)が逃げていくカットが強烈だった。

人工臓器や劇中のレポメン達が振り回す武装はSF感こそあれ、先にありふれていると書いた通り、劇中の物語は形こそ違えど現代の世界でフツーに起こっている話だと思う。企業の顔として外面は中々良い感じだが、業務内容の苛烈さ残虐さを誰よりも知っているという、リーヴ・シュライバーが演じたフランクは色々元ネタが居そうな人物である。レミーがスラムで出会う、貧困から抜け出せず企業の食い物にされている多種多様な人種の人間たちも示唆的だ。

ローンの返済が出来ず、家族と離れたレミーが出会うべスとのドラマも切ない。スラムのボロ屋で、体中が人工臓器で出来ていて借金まみれだと豪語するべスが、この瞳だけは唯一自前のモノとレミーに伝えるシーンは、鳥肌立つくらいカッコ良くてロマンチックだった。この映画自体がココで終わってればよかったのに…

しかし、そこはそれ、問題はフォレスト・ウィテカー扮する色々重た過ぎる同僚ジェイクである。

 

面倒な元ヤンのジェイク君

フォレスト・ウィテカーの独特な顔立ちと、据わった目付きがジェイクという役柄に一役も二役も買っていたと感じる。アフリカ系で演技力が確かな俳優も多い中、フォレスト・ウィテカーをキャスティングして、製作にGOサイン出したプロダクションのセンスに脱帽。

一番最初にある通りなんだけど※ネタバレ注意! まだ本作を観ていない場合、一度本作を鑑賞頂く事を強くオススメします。マジで!

フランクも居る地下室で、レミーとジェイクがおどけ合う場面は二人の関係を象徴していたと思う。ガキの頃から顔馴染みで、軍属も共にし、ヤンチャな事も一通り経験したらしい二人。最早ブロマンスを通り越し、ホモ・ソーシャルとも違う、屈折した強い想いを同性のレミーに対して抱くジェイク。

高いサラリーを受け取り、他人を傷付けて自分のサディズムも満たせる"取り立て屋"の仕事。そんなレポメンの仕事から、レミーがドロップアウトするのでは無いか…?  ジェイクはそれが誰よりも許せなかった。

本作はレミーの夢オチが分かった所で終わる。何か物語を書く上で、夢オチってあっちゃいけない終わり方だと思ってるんだけど、本作ではそこに至る過程が秀逸で、しかも夢オチだった事が判明してからの描写もとにかく胸糞悪い

レミーは覚めない夢の中、今も勝手に正義のヒーローを気取ってるんだろうか。部屋で気絶していたべスはもう助からないんだろう。むしろジェイクにしてみれば「俺のレミーに勝手な事しやがって!!!」ぐらい思ってただろうしね。

みんなも重たい関係の元ヤンには気を付けよう!(一敗)