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崖っぷち父さんが奮闘する不条理ホラー『フッテージ』をザックリとレビュー

真相を追う程、メンタル擦り減らす父の姿に心打たれる

明けましておめでとうございます! 何を今更って感じですが…

年が明けてから、仕事の環境が変わったり、youtube観たり、なんか別に良い仕事無いか探したり、youtubeでVLDL観たりしてたらあっという間に一年の半分が過ぎてしまった。当ブログとしてはだいぶ出遅れてしまった形だが、今日からまた気持ち新たにして執筆に専念したい。

そういう訳で年始のレビューは'12年に公開された不条理ホラー『フッテージ』。

オススメ強度:★★★☆☆

かつては売れっ子だったが、現在は鳴かず飛ばずのノンフィクション作家の父親エリソンとその家族を主軸に、前半は推理小説風な犯罪スリラー、答え合わせとなる後半戦は不条理ホラーとも取れる恐怖映画。若干意地悪な感想かもしれないけど、父親役を演じたイーサン・ホークの天性のしかめっ面が無ければ、この映画は成り立たなかったかもしれない。それとエリソンの吹き替えを担当なさった大川透さんも、大声で怒鳴ったり狼狽えたりといった感情の起伏がしっかり合致してかなり好印象な演技だった。

かつて不可解な惨殺事件が起こった、寂れた風な田舎の一軒家。その屋根裏で見つかった8mmフィルムには、犯人が撮影したらしい事件の一端が克明に記録されていた。更に他のフィルムには、全米各地で発生した未解決殺人事件の模様までもが収められている。

犯人はなぜ、凶行を撮影したのか?一連の事件を起こした連続殺人鬼は同一人物なのか?真相を追う内に自宅の敷地内でも異様な怪奇現象が続発するが、かつてのヒット作すら超える大作になると信じて止まないエリソン当人は、家族や周囲がドン引きしても尚、8mmフィルムの謎を解明するべく躍起になるのだった…

本作で主演を担ったイーサン・ホークは、いたたまれない事情を抱えた家庭の中にあって「家族の為!!子供の為!!」と狂信的となる父親役を何度か演じており、今回も今回で中々しんどい状況に置かれている。

タイプキャストとの意見もあろうが、イーサンはとにかくこの手の役がハマり過ぎ、迫真過ぎでもうヤバい(語彙力) 後半、奥さんのトレイシー(ジュリエット・ライランス)とそこそこな長回しも交えつつケンカするシーンがあるんだが、脂ぎった額に血管が浮かび上がらせ、声が裏返るレベルで怒鳴るイーサンが痛々しい印象で観ていてとても辛かった。一連の夫婦喧嘩シーンは、ヒトによっては殺人事件や亡霊うんぬんよりも怖かったかもしれない。誰かが悪い訳じゃない。父親も母親も家族を思っての事なので尚更だ。

今は世界中がコロナウィルスの渦中で、子供が言う事を聞かなかったりで家庭が険悪になる場面等は、意図せずかなりタイムリーな描写になっている。子役の二人も演技が自然でかなり頑張ってる。変な話だが、本作から仮にホラーを差っ引いたとしても、ヒューマンドラマとして十分鑑賞に堪える出来だったかもしれない。

半面、肝心のホラー描写はやや詰めが甘かったか。確かに8mmフィルムも、家で起こる怪奇現象もひとつひとつは確かに不気味なんだが、全体のフローが

  1. 昼に家族や警察、教授と話す
  2. 8mmフィルム観る
  3. 家で何かが起こる
  4. 家族となんやかんや話して次の日

といった感じでループする為、中盤から早速マンネリになって来る。暗くて何が起こっているのか判りづらい点も気になる。劇中のほとんどが夜中なんで当たり前だが、それにしたって画面が暗過ぎる気がする。というか、日中ですら妙に薄暗いぞ。総評すると家族としてのドラマはbene! ホラー描写には更に工夫が欲しかった。

細やかな仕掛けが嬉しい一作

以下、ネタバレを含むので注意!

思ったよりカット数が少なく、長回しが多い気がした。それと音響が効果的に使われていた様に感じる。テレビで観ていて十分なぐらいだから、劇場のアンプでコレを観たお客さんはさぞ震えた事だろう。

所謂"found footage"モノの中でも手堅い評価を獲得した力作。こじんまりとした予算規模ながらも、公開されるや否や莫大な売り上げを叩き出し、その後に続編も製作された。本作を観ていないという方でも、切られて崩れる木の枝で一家が首吊りにされるカットは観た事ある!という人もいたのかもしれない。

自分は前情報も無く本作を鑑賞したので結構魅入ったんだけど、一部のシネフィルは予告編の時点で「これってアレと同じなんじゃ…」と気付いたかも。かなり核心を突くネタバレになるので、これは注釈部分に隠しておく。*1何かとカルトな作風が印象深いスコット・デリクソン監督と、これまた不憫でカルトな役柄が多い様な気がするイーサン・ホークの熱意が画面からビシバシ伝わって来る。

監督、脚本、プロデュース、撮影の全てにスコット監督がクレジットされており、ほぼほぼ監督の自主映画のようなスタンスで製作された模様。気のせいか?イーサン・ホークが映画に出演なさる度、ヴィンセント・ドノフリオさんも一緒の事が多い気がする。

ホラー映画では度々「そんな幽霊屋敷なんか引き払ってしまえ!」というツッコミが方々から聞かれるが、クライマックスではそれが意外な仕掛けとして機能する。また、映画のボーナスコンテンツとして『別エンディング』なんかがDVDやBlu-rayに収録される事もあるんだが、本作のそれはまさしくエリソンの予期していなかったオルタナティブな結末となっている。個人的に、エリソン一家には報われて欲しかったが…

*1:観返すと序盤から既にシャイニングっぽいし、随所にそれらしい要素がてんこ盛り。

オマージュ作品という事か?しかし、世界観がワイドでダイナミックだったシャイニングに対し、舞台が一軒家の中から動かないフッテージはミクロでタイトな雰囲気で、別ベクトルで息が詰まりそうな雰囲気となっている。

またどちらの主人公も父親であり、執筆業を生業としている点も同じだが、本作のエリソン最後まで闇堕ちしなかった。