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「森で遭難」系の意外な力作!『ザ・リチュアル-いけにえの儀式-』をザックリとレビュー

スウェーデンの山奥を迂闊に侵した男たちのサバイバル

オススメ強度:★★★★

Netflixで絶賛配信中。一言で言ってしまえば『森に入ったらトンデモない目にあいました(死)』系の、海外サバイバルホラーでは最早ド定番なあらすじ。様々に表情を変えるスウェーデンの深緑と壮大な自然の姿に唖然となる。*1北欧諸国における深い森の本能的な恐ろしさを肌で感じる。

ブレアウィッチから数えれば同じ様な映画も相当数あるし、前述したあらすじの通り何となく展開が読めてしまう事を考えると陳腐なのかもしれないが、前半と後半で色味の違うスリリングな展開と、何より主人公グループ四人を務めた役者さん方のリアル過ぎる演技の助けもあり、グイグイ惹き込まれる。

強盗事件に巻き込まれ、命を落とした友人を弔うべくスウェーデンの山へとハイキングに訪れた、イギリス人の男達ルーク、フィル、ハッチ、ドムの四人組。互いに嫌味を言い合いながらも、旅の目的を遂げた四人は帰路へ。しかし、太っちょのドムが足を捻挫した為、行路の進捗に暗雲が立ち込める。リーダーとして四人をまとめる坊主頭のハッチは、地図を片手にルーク(※主人公)に行路変更を提案する。

What? cut through the forest?

おい。まさか森を突っ切るつもりか?

Yeah. Why not? 

そうだ。駄目か?

こうして四人は足を速めるべく、深い深い北欧の森に踏み入るのだった。

アメリカだと"bro"とか"dude"とか言うニュアンスが全部"mate"になっていたり、所々の言い回しも独特なイギリス訛りが聞いててクセになる。ホラー映画は登場人物のキャラ立ちありきだと思うので、本作における登場人物ひとりひとりの丁寧な掘り下げには感動すら覚えた。特にロバート・ジェームズ=コリアーが演じたハッチの「この人に頼んでおけば、とりあえず何とかなるだろう」というキャラ設定が絶妙。遠目に観れば若い頃のポール・ウォーカーみたいな容姿も中々だ。

一方、主人公であるルークが序盤から終わりまで一貫して全く共感出来ないクズ野郎である点もポイント高い。コレに関しては映画を観たヒトによりけりだろうが、少なくとも四人組の中でルークにだけは同情出来なかったし、そもそも冒頭のコンビニでの行動次第じゃ丸く納まってたまである。*2しかもルークは、ホラー映画で余計な事する憎まれ役も担っているので、キチンと夜中にひとり起きてライトも明々と付けるし、テントのジップをやかましく開けたりするよ(怒)

ルークの没個性的なルックスも見るべきだろう。主人公パーティが四人だけなのに太目のドム、インド系と思われるフィル、白髪交じりの坊主頭が渋いハッチと来て、ルークだけ特に引っ掛かる物が無く、見ていて印象に残らない冴えない男として演出してる辺り、製作陣の歪んだ熱意を感じる。

主人公に襲いかかるバケモノも姿が判然としないながらも、とにかく不気味で秀逸の一言。またRitual=儀式の通り、舞台となった森の中には至る所にその痕跡がある。ルーン文字も泥人形も気味悪いが、よく見ると木の皮が剥けて白くなったり、不自然に枝が折れている部分が至る所にあって「ヤツがここを通ったのか!?」と見ていて不安になった。

この手のサバイバルホラーにしては不気味さ、気色の悪さが抜きん出ているのでオススメ。過去にビートたけしと大竹まことのオカルト番組で、ビッグフットの映像を観て興奮した方なら特に必見だと思う。

前半ブレアウィッチ、後半トロールハンター

実質的に二部構成な本作。森に踏み入って案の定現在位置が分からなくなったり、不気味なナニカが見つかり始める前半はブレアウィッチ、被害が拡大しバケモノが正体を現す後半は何となくトロールハンターを彷彿させる。もののけ姫のシシ神さまを見ると「なんとなく怖い」または「不安になる」と言う方は今作でも恐怖を感じると思う。

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単に巨大なだけで無く幻惑も得意で、更に不定形に表現されている辺りは、個人的にかなりポイント高いし強く印象に残った。*3 もしフィギュアでもあれば高くても欲しいまである

ブレアウィッチ・プロジェクトで襲い掛かって来るバケモノ=森そのものなので正体が無くって当然との意見もある様だが、自分としてはブレアよりも本作の方がより好きだ。ホラーやスリラー初心者ならば、背筋が凍る事間違い無し。勿論、『森で遭難』系のサバイバルホラーを見慣れたベテランにもオススメしたい力作だ。

*1:尚、実際のロケ地はルーマニアとの事。

*2:終盤で道が照らされる場面、アレがロバートだったらと思うとかなり切なく胸に迫る物がある…

*3:後半戦を観るに、他宗教に対して拒否感の強いキリスト教圏が勝手に抱いてる怖さもある様な気がする。