血を吸う大地ッ!!

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『キャビン』+『カメラを止めるな!』虚構と現実が交錯する奇抜ホラー(?)二本まとめてレビュー!

今週のお題「特大ゴールデンウィークSP」

大型連休中、何するかって??

引き籠って映画観るに決まってんだろ(マジギレ)

『キャビン』&『カメラを止めるな!』二本立てレビュー!の画像

そういう訳で、今回はちょっと趣向を変えて『キャビン』&『カメラを止めるな!』の二本立てレビュー。この二本は大概"ホラー"で括られているが、実のところ前者はホラーコメディ、後者は一部ドキュメンタリー調のホーム・ドラマみたいな作りになっており、尚且つホラー映画という幻想メタ過ぎる現実が入り乱れる、邪道を通り越してやや悪手なアプローチが不思議な魅力となっている。

変な話スクリーンで完成品を観ながら、その映画のメイキングシーンを一緒に眺めるような感じで、一歩間違えれば興ざめしそうな危うい所をギリギリのバランス感覚でキープし、観る者を飽きさせないような工夫を劇中あちこちに仕込んでいる。

欲張りな事に「観たでしょ今の。俺らの仕事も大変なんですからw」という、通常ならウンザリしそうな製作サイドの愚痴まで映す無節操さもGood!映画好きならきっとハマる事間違いなしの二本なのだ。

前置きはこんぐらいにして、早速レビューしてみよう。あ、それと二本とも

超!!ネタバレありレビューなのであしからず

『キャビン』レビュー

オススメ強度:★★★★★


映画『キャビン』予告編

休暇中、山小屋でバカンスを楽しむ男女五人組。ひょんなことから地下室の日記に秘められたラテンのスペルを読んでしまい、悪しき怨霊一族が彼らに襲いかかるーという死霊のはらわたまんまな筋書。

しかして、その山小屋の実態は隔絶された屠殺場だった。『淫婦』『戦士』『賢者』『愚者』そして『処女』。山小屋も休暇の予定も、全ては悪しき古代神を鎮める儀式を執行する為に仕組まれたもの。五人の若者たちはそうとは知らず、与えられた役割通りにひとり、またひとりと嬲り殺しされてしまう。

果たして五人の若者たちは生き残れるのか、生贄の儀式の行く末は…という訳で物語はクリステン・コノリー扮する何も知らない犠牲者デイナ側の五人と、彼らを殺戮せんと奮闘する儀式運営側のふたつのドラマが劇中で同時進行する形となる。よくよく見ると日本やスペイン等、劇中の世界各地で儀式が執り行われているようだ。マドリードどうなってんだよコレ…

実質的にドリュー・ゴダートとジョス・ウィドンの共作となった、ホラー仕立てのスラップスティックもの(と個人的に思う)。やや時代錯誤な舞台設定にも関わらず、本作があんまりにもウケた為、'10年代に二番煎じの山小屋ホラーが量産される事となる。コレがホントのキャビン・フィーバー。

ファンの間で"deus-ex -machina"愛されて止まない最終局面のグロゴアシーンが、製作から十周年を経た今でも語り草な一本。F.E.A.Rのアルマ、L4Dのブーマーやウィッチ、カエルに封じ込められた貞子風の悪霊、スケキヨ一家など製作スタッフのギークぶりに感嘆する。監視カメラに映る大量の映像群は、まるで短編ホラーを高速でザッピングしてるかのようだ。

個人的に『愚者』マーティのキャラクターがツボ過ぎて、観る度にホント笑ってしまう(笑)色んな映画観て来たけど、ユニコーンのスラッシャー映画は未だかつて観た事が無い…はじまりから終わりまで、ホラー映画マニアならきっと答え合わせしたくなる事だろう。

ゲイリー&ハドリーの運営側コンビは単純に観客のメタファーとして捉える事も出来、ホラー映画観る時は勿論、現実のテレビで震災やテロのニュースが流れてる時でも、画面の向こう側であれば「自分には関係ない」と、誰もが気楽で残酷に振る舞えるという酷な皮肉に満ちている。


Tool - Vicarious Live New Version IEM (Charlotte 2016) HD

その為、画面の向こう側と現実のコチラ側が逆転するクライマックスのカタルシスがヤバい(語彙低下)

加えてある意味マルチ・バースな構造の本作を鑑みて、やはりアベンジャーズという大作はジョス・ウィドンにしか出来なかったとの評もアリ。それとジョデル・フェルランドとシガニー・ウィーバー両名もかなりオイシイ役所で出演しており、マニアには堪らないサプライズとなっている。

本作に関しては、以下のようなもうちょっと意地悪な考察もある。

  • プロデューサーor配給会社 =シガニー・ウィーバー扮する局長
  • 監督など映画製作サイド  =ハドリー&ゲイリーの現場指揮官
  • 墓から蘇るバックナー一族 =スタッフ
  • 夏休み中の若者五人組   =言う事聞かないキャスト達
  • 終盤の施設崩壊シーン   =無視出来ないお上からの指示&進捗遅延
  • 甦る古代神        =映画をレビューする大衆

ある意味、良さげな企画がどうやってクソ映画に転じるかを徹底した描いたとも言える。それと、さっき製作十周年って書いて「おかしくね?コレ公開2012年じゃん!」との声もありそうだが、実はメトロ・ゴールドウイン・メイヤー傘下で構想含め製作自体は2008年に開始し、2009年~10年に掛けて配給される予定だった。しかし、当のMGMが「ゴメン(笑)やっぱ金無いわw」と財政難のアオリで公開が無期限延期に。最終的に配給権をライオンズ・ゲートが買い上げ、全米公開。ここ日本では更に一年遅れ、2013年に解禁された。

余談ながら、主人公五人組でデイナ役のクリステン・コノリーが一番の年長さん。散り様勇ましいカート役のクリス・ヘムズワースは'08年当時、俳優としてのキャリアに行き詰っており「これでダメなら実家に帰ってマトモな職に就こう」とまで考えていたらしい。

劇場公開こそ遅れたがコレが引き金となり、彼のその後の活躍は言わずもがなである。そう言われて改めて見直すと、役柄もあってか'11年の『マイティ・ソー』よりも若く見える気がする。'08~'09年当時、MCUの枠組みはまだ始まったばかりだったが、未だにヘルロードvsカートの対決を本作で観たかったとの声もある。

また『賢者』ホールデン役のジェシー・ウィリアムズは大学卒業後、フィラデルフィアの高校で六年間教鞭を振るっていたガチなインテリ。海外ドラマ、映画の出演に加えて最近ではフォトリアルのゲームにも参画し、ここ日本でも人気を不動のものとした。

ホラー映画好きは勿論、ゲーマーやサブカルマニアも必見の一本。マジでオススメしますマジで!

『カメラを止めるな!』レビュー

オススメ強度:★★★★


映画「カメラを止めるな!」特報

ぶっちゃけ予告編の時点でめっちゃネタバレしてる'17年のダークホース。正直言うと食わず嫌いしていたが、友人宅で鑑賞しものすごく感動した!!(アホ)

誰が言ったか

一番最初に「うわ~クソ映画か?コレ…」と受け手に思わせる手法が、後々重いボディブローになって効いてくる

との評を聞き、「なるほど!」と納得した覚えがある。この記事もネタバレありきのレビューだけど、出来れば多くの人に事前情報無しで鑑賞して頂きたい一本。

とにかく製作に関して、色々と伝説じみた逸話が際限無く出て来る怪作。公開当時、コレほどの話題になるとは当然誰も思っておらず、劇場で無料配布していた台本やらパンフやらが、後々オークション等で火が付きトンデモ価格でやりとりされた。実際に鑑賞して、個人的にコレは‼と感嘆したのはプロデューサーという役職が如何に創作の現場で害悪かそれとなく描写した点だと思う。まぁ古沢Pは劇中で痛い目見たけどね…

最初の37分長回しはホントに37分間そのまま長回しのノーカットで撮影。メイク落としやセットの清掃&再設営等もあり、どう頑張っても一日にトライ出来るのは三回までだったらしく、最終的に採用されたのは6テイク目。それが撮れるまで膨大なNGテイクと日数を重ねた事だろう。キャストとスタッフの皆さま、ホントお疲れ様でしたorz

キャストの設定や演技も絶妙だった。確かに映画だしドラマっぽい演技なんだけど、なんでか全員揃って妙にリアルで生々しく「あ~居るわ!こんなヤツ!」と思わせる人間臭さ、厭味ったらしさが凄まじい。山越を観てると自分の営業マン時代が思い出され殺したくなりました。カメ止めで誰が一番不憫だったか、ファン同士で語らせたら多分一生終わんないじゃなかろうか。

本作は劇中作"ONE CUT OF THE DEAD"本編と、その製作過程の悲喜こもごもをユニークな切り口で表現した意欲作だが、それまで互いに距離があった日暮一家が再生するホーム・ドラマとして観るとそこそこ胸に迫るものがある。

クレーンがぶっ壊れ、仕方なくラストシーンとなる高度からの見下ろしカットを人間ピラミッドで撮影しようとするスタッフ&キャスト達。カミさんの晴美が、頭に斧が刺さったまま遠巻きにカットの声を待つ場面が、見た目こそ超シュールながら何処か儚く印象的で、作中で一番好きなカットになった。

『カメラを止めるな!』の応援上映なんてのも企画されたようだ。

www.dailyshincho.jp

ホラー描写があるのに何故!?との声もありそうだが、実際一度観ると劇中で奮闘する登場人物ひとりひとりが愛おしく、応援したくなる。

この映画も予算はわずか¥300万で、完成に漕ぎ着けるまでの苦労は想像を絶するものだったろう。しかし、意外にも映画はハッピーエンドで決着し、最後に全員が空を仰ぐシーンは不思議と爽やか。とりわけ日本は"創作"に厳しいが、上田監督も日暮一家も決してネガティブにはならず「とりあえずやってみようよ。俺らもコレ作ったんだから」という気だるげで暖かなメッセージを、我々に投げ掛けたような気がした。表現する手法が何であれ、クリエイターであればきっと胸に突き刺さる映画だと思う。

規模だけ考えればB級通り越したZ級映画だが、それ以上の熱さが『カメラを止めるな!』には秘められている。ガワはまさしくキワモノのそれだが、先入観に囚われずに是非色んな人に触れて欲しい一本だ。

先日のおはなし

先日、こんな記事をUPした。

 

実の所、当日は『アベンジャーズ-エンドゲーム-』の公開初日で、仕事が終わったら友人とレイトショー観るべく劇場に足を運ぶつもりだった。北東北なんで、混みはすれども席はあるだろうとタカを括っていたが、夕方スマホで確認した時点でなんと全席全滅。たかが映画とは言え、流石はMCU。十年分の歴史を積み重ねただけはある。

しょうがないんで他の映画観ようと、ビデオ屋で円盤漁る羽目に…

その友人はホラー映画がそんなに得意(?)では無いんだが「コレ観てよ。ホラーというよりコメディだからw」と勧めたのが『キャビン』で、そのついでに鑑賞したのが『カメラを止めるな!』だった。思いがけずブログのネタを提供してくれた友人に感謝。

カメ止めの上田監督は製作に当たり、ロドリゲスの『フロム・ダスク・ティル・ドーン』を参考としたらしいが、この二本をよくよく観ると複数パート構成、途中からタッチが切り替わる、序盤からは想像しにくいラスト等の共通点が多い気がする。

どちらも奇抜という言葉では足りないぐらいの変化球な作風だが、これほど創作物が溢れた世の中だからこそ、自由気ままな映画も産まれるという証明にもなったし、私たち観客にとってもありがたい事だと思う。

ついでにビデオ屋でこんな物も購入。特に予定はしてないが、次のレビューはコレだろうかな??