血を吸う大地ッ!!

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ドラマにあるまじき奥深さ『マンダロリアン』S2EP5をザックリとレビュー

ロザリオ・ドーソンの表現力に圧倒される

オススメ強度:★★★★★

これまで、なんやかんやベイビーに手を焼いていたディンだが、今回は貴重な親バカシーンあり。

自分はSTARWARSのファンだから、どうしても色眼鏡で観てしまうんだがそれを抜きにしても、今回アソーカ・タノを演じたロザリオ・ドーソンの表現力には驚かされたと思う。アソーカが口を開く度に「この人、色々見て来た物があったんだなぁ…」と思わせる様な、とにかく『含み』を感じさせる雰囲気なのだ。

正直クローン・ウォーズのアソーカと、ロザリオ・ドーソンという俳優の雰囲気にはかなりギャップがあると思うんだが、実際にメイクアップしてライトセイバーを二刀流や逆手で振り回し、ベイビーヨーダことグルーグーとフォースを通じて会話したり、はやるディンは諭したりする姿は、時に迷いながらも己を貫き銀河を駆け抜け続けた、間違い無くアソーカ・タノその人なのだった。

演出のバランスも良かった。CGアニメで見るアソーカの方は割と野性味あふれるアクティブな雰囲気だったが、このエピソードでは柔和とワイルドさの配分が丁度良く、アソーカの玄人染みた雰囲気に説得力を与えている。

※以下、アソーカ・タノに関するネタバレ注意!!

アソーカは色々あって放逐された結果、マンダロリアンの時系列の中でも"ジェダイ"と厳密に呼べるかどうか微妙な扱いと思われる。しかし、帝国の残党を討ち取り、各地を開放して回るアソーカの姿は、今となっては誰よりもジェダイらしく写る。かつてヨーダがアナキンに「恐れが見える」と語り、今度はアソーカがグルーグーに同じく応対する姿はヒドい皮肉としか言いようがない。

またサントラも素晴らしい。戦闘シーンはとにかく不気味な音の仕上がり、それ以外の会話のカット等は暴力的に情緒を揺さぶるようなエモーショナルさになっている。グルーグーとアソーカがフォースを通じて繋がっているシーンがエモ過ぎてヤバい。終盤、グルーグーの頭越しにレイザークレストの内部が見えて、その内にディンが現れアソーカに別れを告げるカットがあるんだが、ここで流れるテーマ曲のアレンジが泣けて泣けて仕方が無かった。ディンは気持ち半分でアソーカを当てにしていたが、それも叶わなかった。次なる目標も決まり、いよいよグルーグーの決断も迫っている。

 

アジア映画と西部劇のハイブリッドを実現

ルーカスがSTARWARSを撮った際、自分が好きだった時代劇や戦争映画を落とし込みしたように、自分達も原典に立ち返って好きだった物を投影しようという試みが見て取れるエピソード。欧米の映像作家がこぞってサムライと西部劇のハイブリッドを撮ろうと悪戦苦闘している一方、ファブローとフィローニの二人はキャラクターと舞台を巧みに操り、難しそうなハードルを容易くクリアしてしまった。

『七人の侍』の画像

まず荒廃した土地にそびえる悪党の根城がポツンとあって、そこを互いに見知らぬ手練れ達が少数精鋭で攻め入る、という最早コテコテな伝統芸能染みたあらすじ。舞台となった惑星コルヴァスは目に入る土地が全て焼け野原の様で、ケムリと霧が濛々立ち込めており、黒澤映画に吹き荒れる風を思わせる。辺りが暗くなると、街の様子がアジアの何処かにいるような異国情緒を感じさせ、アソーカとモーガンが水辺の庭で決斗する場面は、時代劇や香港の武侠映画を彷彿させるかの様だ。

悪役のカメオも要チェック。軍人崩れのガンマンをSF映画の雄マイケル・ビーンが、そしてベスカーの槍を得物とするモーガンをダイアナ・リー・イノセントが演じている。ダイアナの名付け親は、なんとあのブルース・リー御本人との事。武術家としてのキャリアを、アソーカとの殺陣で存分に披露してくれている。

今回、遂にベイビーヨーダの本名が判明。ついでに本来なら五十路であるハズのベイビーヨーダが、今のような幼児の様に変わり果ててしまった理由も明らかになった。そしてスローンの言及もあり、"REBELS"組参戦の機運も思いがけず高まって来た。

予てよりCGアニメのキャラクターを実写化にきっちり落とし込めるのか?という疑問を改めて払拭してくれた回でもある。シーズン2の残り話数も気になるが、どこまで描いてくれるか更に期待。