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正義に苦しむ犯罪スリラー『イコライザー2』をザックリとレビュー

寡黙な正義の執行人、マッコールふたたび

オススメ強度:★★★★

犯罪スリラーというジャンルながら、超写実的でリアルな質感を保ち、街に潜む邪悪に黙々と立ち向かう一匹狼の、殺伐とした日常を描いた『イコライザー』の続編。デンゼル・ワシントン扮するマッコールの、流れ作業的なムダの無い殺りには相変わらず驚かされる。*1また、ブリュッセルに住まう協力者一家の殺害現場をひとり推理する場面もシビれた。

元々'80年代に全米で放映されたドラマシリーズ『ザ・シークレット・ハンター』が原作だが、デンゼル自身の提案もあり、主人公マッコールのバックボーンはかなり複雑な物となっている。

実は妻の死を経験していたらしいマッコール。しかし、不良ぶってるマイルズ、失われた家族を未だ想い続けるユダヤ人の老人サム、元同僚のスーザン等に囲まれて、狭い住まいで何も持たないながらも、マッコールは平穏な暮らしを送っていた。しかし、馴染みだったスーザンが訪問先のブリュッセルで何者かに殺され、マッコールは再び過去と向き合う事となる。

ペドロ・パスカルが重要な役回りを担当。実質、ペドロとデンゼルのダブル主演と言って差し支えない演技だと感じる。真犯人の幼い娘さん達に、超にこやかに対応するデンゼルの演技は、マッコールが主人公にも関わらず結構胸糞悪い… またNetflixでのペドロの評判もあってか、NARCOSを意識した様なサントラもあり。

中盤過ぎた辺りで黒幕の自宅にマッコール自ら赴く場面がある。個人的に全く予想して無かった為、このどんでん返しには驚かされた。でも黒幕達の動機はベタと言えばベタである為、勘の鋭いヒトなら話の序盤から黒幕に気付いていたかも。それと同時にあるべき正義の姿にも悩まされる。どうにかして黒幕と折り合う事が出来なかった物か…

マッコールはひとり孤独に暮らしてる訳だし、そりゃ改善の余地も無いとは思うが、彼の強迫性障害は相変わらずの様である。 それと今作で妻と死別しただけでなく、かなり破綻した夫婦生活だったらしい事も示唆された。

今作のスーザンに対する仇討ちも然り、前作のまだ幼い娼婦アリーナ(クロエ・グレース・モレッツ)を救おうと躍起になった時もそうだが、マッコールの「女を傷つけた者は誰であれ容赦しない」という姿勢は亡くなった奥さんの影響も結構ありそうだ。マッコールが抱えているハンデもあるし夫妻は子供も望めなかったろうが、マイルズとの関係はマッコールが夢見ていたフツーの家庭の様にも伺える。

 

デンゼル&フークア監督が魅せる"必殺仕事人2"

一作目が配給された際、必殺仕事人のテーマに合わせたCMが印象的だった。そして今作は主人公マッコールや、彼を取り巻く人々の、日々の暮らしが更に掘り下げられている。その為、ここ日本で中村主水や秀、政や渡辺小五郎といった正義の為に人を殺す日常を描いた特撮ドラマに慣れ親しんだ私達にとって、『イコライザー』シリーズはハリウッド映画ながら不思議と馴染み深い雰囲気。また高精細なんだけど陰影に富んだカットの多くも何となく仕事人を思わせてくれる。

「意外と地味」との評もあるが*2、高架下でマシンガン撮影を用いたらしいグルグル回る銃撃戦や、電車内での乱闘や金持ちのガキ共を一掃するシーン、ラスト海岸近くでの死闘など、殺陣としてかなり派手で見応えあるチャレンジも見受けられる。また前述した通り、必殺仕事人で言う所の仕事パートよりも、今作はむしろ日常の悲喜こもごもこそ物語のメインな風にも感じる。

「人は忘れ去られた時に死ぬんだ」というセリフに心打たれる。マッコールが街を後にした後、マイルズが再び学校に通い始め、サムが思いがけない再会を果たすラストに震えた。批評家からの評判はいずれも芳しく無かったらしいが、ここ日本でもシリーズ二作合わせて4億円以上の動員を記録した『イコライザー』。根強いファンが多いマッコールの活躍を、出来ればもう一度拝みたい限りだ。

*1:『ジョン・ウィックのえんぴつ』同様に、今作でマッコールが凶器として使用したクレジットカードが方々でネタにされている

*2:確かにジョン・ウィックとかジェイソン・ボーンとか、同じ暗殺者の逆襲がテーマの映画と比べれば地味かもしれないが…