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ロス市警の異常な日常を乾いた画風で魅せる‼デヴィッド・エアー監督作「エンド・オヴ・ウォッチ」!

 

 あらすじ

警官の制止も聞かず、エスカレートしたカーチェイスの果て、運転していたアフリカ系のチンピラを銃殺したテイラー(ジェイク・ギレンホール)とザヴァロ(マイケル・ペニャ)の二人。判事から「正当防衛」が認められ、ようやっと現場復帰した二人だがロサンゼルスに漂う不穏な空気は、以前より強く色濃くなっていった。

復帰後、テイラーがきまぐれで始めた勤務風景の『撮影』。相棒ザヴァロと街中で抱える案件は度々大事に発展したが、その活躍が認められ勲章も賜り、ついでにちゃっかり彼女もゲット!何もかもが順調で、自由だった。

しかし、熱く乾いたロスには未だ凶暴な牙が隠されている。ストリートで猛威を振るうメキシカンギャング達。普段のパトロールでは到底ありえない異様な光景が、LAPDを震撼させる。凶悪な暴力の波は、二人の都合など御構い無しに、いよいよ眼前まで迫っていた。

レビュー「惨劇の始まり、警視の終わり」

オススメ強度:★★★★★

私は非難轟々のスースクも、結構好きなタチなんだが、本作と見比べると「何故こんな風に仕上げる事が出来なかったのか」と正直ヤキモチ。主役の二人はMCUでかなりオイシイ役所を頂戴し、今や色んな企画に引っ張りだこの大スターだが、当時そんな事になるなんて誰が予想しただろうか(笑)

とにかく全編通してソリッドでドライな作風が素晴らしい逸品!ご覧頂ければお分かりの通り、テイラーがあっちこっち仕込んだカメラ越しの映像という体の為、あえてザラザラした撮影の質感。実際、一部はライブアクションカメラで撮った映像をそのまま本編に起用したとの事。 

一方、夜景を映すシーンでは明らかに高精細・高感度のクソ高そうなカメラも使用。空撮やブライアンの瞳に夜景が反射して滲む場面等は、画質やフレームレートが違い過ぎて「ホントに同じ映画か?」と疑うほど(笑)Blu-rayや4K HD等のソフトなら、その違いがより実感出来る事だろう。

googleで「LAPD 装備」と検索すると、フツーのパトカーでもアホみたいな重装備を積載してる様子が解る。劇中でも二人が復帰後の初パトロール時、全員揃ってショットガンを持ち寄り各々のパトカーに乗り込むが、私達の視点からだと少々大袈裟に思える。

しかし、劇中の二人が目にする光景を前にすると「こりゃ仕方無いわ…」と納得。ロサンゼルスの土地柄は、私達の生活から遠くかけ離れており、終始唖然。茹だるような画面の熱も伴って頭がクラクラしてしまう。それにプラスして、通常の海外ドラマだとスタイリッシュに映されがちな刑事や、特別捜査班が事情も何も知らせずに、我が物顔で所轄から仕事をかっさらっていく嫌味で冷たい連中として描かれている点も面白い。

ロスの狂気を描く一方、テイラーとザヴァラの穏やかな日常にもクローズアップ。ザヴァラは婚約者が出来たと語るテイラーに、家族や親類円満の秘訣や夫婦仲を良好に保つアドバイスを熱く伝授するが、テイラーはやや辟易気味。

遊びが過ぎる上に結婚に踏み切る事を躊躇う「女は星の数程いる」なテイラー。対照的に学生時代から続く、一途な恋が実って結婚したザヴァラは彼を理解出来ない。 

そんなテイラーもようやく踏ん切りがつき、婚約者ジャネットと無事に結ばれる。結婚式で新郎新婦二人が踊ったり、酔った(?)ザヴァラの嫁さんギャビーが突如下品な下ネタをまくし立て、暴走したりと普段の仕事が嘘かと思う程、楽しい時間。

しかし、ロスの街並みは二人を容赦無く呑み込んで、暗い場所へと導いていく。 

若干ネタバレだが、この映画ハッピーエンドで終わってくれません。

視聴する際は念の為、体力に余裕がある時の方が良いだろう。

小ネタと解説

とにかく動と静明と暗躁と鬱を織り交ぜた目まぐるしい作風。

ワーナー側がDCEU拡張の折、エアー監督側に求めたのはまさしくこのメリハリ感だったと痛感したし、それに画面がパッパッと矢継ぎ早に忙しく切り替わる構成も今に思えば、アメコミ出身のスースクにこそピッタリだったような気がする。

メイキングで顔をのぞかせる監督自身は、現在よりも幾分ガッシリした印象で体力的にも制作意欲も溢れんばかりだったろう。彼の絶倫ぶりを伺わせるエピソードをここでひとつ。監督のデヴィッド氏は今作の構想が決まると脚本をわずか6日間(!?)で仕上げ、主要キャスト候補にプロットを直ちに提出。

主役のテイラー巡査を演じたジェイク・ギレンホールも、骨太な筋書きに二つ返事で参加を表明し、更にロス市警全面協力の獲得にも漕ぎ着けた。撮影含めたプロダクションも、ほぼ一年強で完了というトンデモない突貫仕上げにも関わらず、この完成度! 

封切となった'12年秋口での上映規模はやや小さかった物の、本作は評論家筋から太鼓判を頂き人気が爆発。同年の冬には規模を拡張し再上映となる異例の事態。結果的に制作費を上回る興行収入を獲得し、思わぬブロックバスターとなった。 

トレイニング・デイの終盤にて、イーサン・ホーク演じるホイトが、メキシカンギャングの家に立ち寄る際に思わずビビる描写があったが、今作を観れば如何にラテン系ヤクザが容赦の無い連中なのか思い知らされる。しかし、識者によってはこれでもまだ手緩い方なのだそう。ヤバ過ぎんだろ…

 

撮影の都合上、かなりアドリブが多いらしく特に主演二人の掛け合いはおおまかな流れだけ確認し、後はほとんど素で演技してる風に伺える。脇を飾るキャストも活き活きとしてGOOD!ピッチ・パーフェクトで一世を風靡したアナ・ケンドリックが本作では、テイラーの恋人ジャネット役で顔見せしている。


Anna Kendrick - Cups (Pitch Perfect’s “When I’m Gone”) [Official Video]

チョイ役ながらも笑顔がまぶしい!また「アグリー・ベティ」で、ブサカワチャーミングな個性が魅力な主人公ベティを演じた、アメリカ・フェレーラがレズビアンのごっついラテン系警官オロスコ役を熱演。オロスコの役柄もあり、同一人物に見えない(汗)実際、観終わってからもしばらく気付きませんでしたよ!マジで!!

その他、巡査部長役のフランク・グリロ氏と業務上何かとテイラーと対立する警官ハウザーのデヴィッド・ハーバー氏の二人も印象的だった。テイラーと比較すると消極的な印象すらあるハウザーだが、ラストを観てからだと、彼の慎重さを理解出来るハズ。テイラーもいつか第二のハウザーと成り果ててしまうのだろうか?

そして巡査部長。彼は警官襲撃のような重大な案件を前にしても余裕すら感じさせる歴戦の警視で、主人公二人組にも度々助言を与えてくれる。しかし、彼が結婚式で酔い潰れ、目を潤ませて独白するシーンに心打たれた。

ロス市警の所轄は皆、気丈に振舞い続けるが、実際は心の内に強烈なトラウマがこびりついて、それを拭い去る事が出来ずにいる。 ロスの熱く冷たい日々を徹底的に暴くPOVの衝撃作。犯罪映画に一作を投じた、エアー監督の力作だ。

インフォ、キャスト、製作スタッフ等まとめ

原題:End of Watch

製作年:2012年

監督・脚本:デヴィッド・エアー

製作主導:エクスクルーシブ・メディア,クライヴ・フィルム,CECTV

製作国:アメリカ 

登場人物

白人警官ブライアン・テイラー:ジェイク・ギレンホール

ラテン移民警官のマイク・ザヴァラ:マイケル・ペニャ

ブライアンの婚約者ジャネット:アナ・ケンドリック

ラテン系の女性警官オロスコ:アメリカ・フェレーラ

LAPD巡査部長:フランク・グリロ

メキシコ系ギャングスタの"ビッグ・イヴル":モリス・コンプト

同じくメキシカンギャングスタのララ:ヤヒラ・”フラキス”・ガルシア

('19 10/6 追記修正)