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ガチ過ぎてもう笑うしか無い『ジョン・ウィック-チャプターⅡ-』をザックリとレビュー

あらすじ

ヴィゴ、ヨセフとの因縁が過ぎ去っても尚、ジョンの心には暴風が吹き荒れる。

ヴィゴの兄弟にして、ロシアンマフィア現頭目アブラムの根城を荒らし回り、ヨセフが奪い去ったマスタングも奪還。ようやく周りも落ち着くかと思いきや、大胆で無鉄砲過ぎる彼の動向を、古株のやくざ者は見逃さなかった。

彼を引退へと導いた、イタリア人マフィアの幹部サンティーノ・ダントニオ。そして、彼が持ち出した裏社会における鉄則のひとつ『誓印』。「殺し屋として復帰し、昔の貸しを清算しろ」と迫られるジョンだったが、当の本人は仕事の仔細も聴かず、『誓印』を突っ撥ねる。

すると血気盛んなサンティーノはジョンの邸宅を爆砕。助言を乞うべく、コンチネンタルNYの支配人ウィンストンを尋ねるが、彼は「ルールに従え」と無情に言葉を返す。

貸金庫に預けた荷物を改め、絶叫するジョン・ウィック。神話として語り継がれる殺し屋の『仕事』が、今ふたたび幕を開ける…

レビュー『かつてない程ヤケクソなキアヌ』

オススメ強度:★★★★

苛烈なアクションで好評を博したヒットマン活劇第二弾。本国では2月公開の春映画だったが遅れる事ほぼ半年、やっとの事で日本上陸となった。

凶悪で伝説的な腕ながら、内面はナイーブかつ繊細で、くたびれ果てた殺し屋ジョン・ウィックを、キアヌ・リーヴスが体を張って見事に表現。腕前は確か乍ら『無敵』では無く、次第に傷付くジョンの姿にとにかくハラハラ。極限までヤケに陥るキアヌを拝めるのは、今シリーズぐらいなもんだろう。

鍛錬の甲斐もあって、ガンアクションも、前作以上に磨きが掛かりbene!

(↑taran tacticalチャンネルにおけるチャプターⅡへ向けたキアヌの練習風景。過去にはWalking Deadの撮影に向け、マイケル・ルーカーも訪れた射撃専門スタジオ。キアヌのみならず、チャド監督自らも練習に参加していたらしい。前作の3Gunトレーニングの動画も鑑みて、タイムスコアが格段と上達して行く様を拝める。仮に俳優生活をドロップアウトしたとして、スポンサーもすぐ獲得出来るだろうし、現役競技選手としてやってけるんでは?と邪推すらしてしまう程。)

独特の長回しと言い、演出やライティングと言い、とにかくアクションありきで前作の評では「シナリオがむちゃくちゃ」との意見もあったにも関わらず、「ならもっと多くしてやんよ‼」と頭の悪い大博打な構成(褒め言葉)

前作のメイキングでも語られていたが、柔術を表現する難しさから、本作では思い切って被写体からカメラを離し、更に前作同様の長回しでアクションシーンをより鮮明な仕上がりに纏め上げている。 

冒頭、水浸しの倉庫でロシア人と延々殴り合うシーンに惚れ惚れ。短いカット割り&手ブレで誤魔化すアクションばかり流行る昨今だが、少しはジョン・ウィック観て反省しろ!(マジギレ)

更にアクション・スタント出身のチャド監督ら製作陣の好奇心も伺える。賛否両論あれど、映像美とヴァイオレンス描写の徹底を目指したニコラス・ウィンディング・レフン監督作『ドライブ』に触発されたような、奇抜なシュートが前作以上で、更にバラエティ豊かとなっている。

(↑レフン監督をメジャーに押し上げた'10年製作のフィルム・ノワール。コチラはオンデマンドのみだった吹き替えも収録した現時点での完全版Blu-ray。本筋のドラマのみならず実験的なカットやシュートが強烈。更に車やダークでエレガントなムード、類を見ない暴力描写など共通点も多数。コレが話題にならなければジョン・ウィックも製作に至らなかったのでは?と勝手に思っている。)

ローマの地下洞窟にて、刺客のライトが明滅する中での猛追戦。駅のホームの静かな銃撃戦。電車内でのナイフバトル。ガラスと鏡で仕切られた美術展での死闘、と目を疑う仕上がり。特に鏡張りの美術展における銃撃戦は、GBも多用しているとは思われるが、今まで観た事が無いようなアクションシーン構成で感嘆。

前作だとダウナーなBGMの風呂場に始まり、EDMが痺れるクラブでの大銃撃戦が繰り広げられた『レッド・サークル』のシーンばかり印象強かったのだが、今作では仕事を終えたジョンが疾走する暗がりのローマ、そしてNYに場面を移してからの暗殺者の強襲、そこから翻ってサンティーノらとの攻防戦といずれも苛烈なインパクト。伝統的な気品溢れるローマと、シックで何処か無機質なNYの対比がユニークだ。 

リヴェンジ映画はシンプルな程、至高であると個人的に感じている為、前作のシナリオ自体も私は凄く好きだったんだが、今作ではジョンの内面や彼を取り巻く環境に、よりクローズアップ。前作で、本筋よりむしろ世界観に惹かれたと言う方は更に楽しめる事だろう。裏社会におけるコミュニティの、かなり独特な描写が秀逸かつ魅力的だ。

特に前作から続いたコンチネンタル・ホテルの面々とジョンの関係は、本筋とはまた違ったドラマが芽生え、一見の価値あり。しかし、全てを語り尽してはくれない為、コレは今後のメディアミックスに期待。チャド監督率いる製作陣は、更なるシリーズ展開を模索している様子だが、今回、ちょっとオチが投げやり過ぎなのでは??と言うか始まりから終わりまで、プロットが欲張り過ぎてる気も。

元々は前作のダークホース的ヒットを受け、TVドラマとして構成し直す声もあったそ様だが、それを押し退けて今回の劇場公開に漕ぎ着けたそうな。今後のウィックの死闘を如何に表現し、盛り立てて行くのか、製作陣の手腕に期待したい。

ジョン・ウィックこぼれ話『相変わらず豪華な脇役とミリタリー描写』

前作のウィレム・デフォー、アドリアーナ・パリッキ、アルフィ・アレン、そして'17年6/27、肺ガンでこの世を去ったミカエル・ニクヴィスト氏。主役であるキアヌの殺陣も凄まじい限りながら、その脇を固める豪華な個性派俳優陣の活躍にも恵まれた、ジョン・ウィックの世界。

前作で賛否両論だった、独特なデザインの字幕もそのまま継承。ひと昔前のSFみたいなダサカッコ良さが感じられ、私は好きです。

嬉しい事に本作でもヘレン役でブリジット・モイナハン、整備士オーレリオでジョン・レグイザモ、コンチネンタルの面々としてイアン・マクシェーン、ランス・レディック両名。

更に前作のキャラクターがキャストそのままにチョイ役で一同にカメオ。世界観の拡充に文字通り、全員が一役買っている。冒頭、アブラム役で出演したピーター・ストーメア氏の胡散臭いんだけど、なんだか説得力のある、アクの強いロシア人演技がめっちゃツボ。続けざま、ウォッカを注いで「мир」と一言語り、乾杯するキアヌが超シュール。

これまでのジョンは、ロシアンマフィアで武名を轟かせたユダヤ系の暗殺者といった印象だったが、本作では更に手話の他、様々な言語も披露。世界各地の諸方を渡り歩いてきたであろう、ジョン・ウィックという、寡黙で腕の立つ殺し屋のバックボーンが、少しずつ露わとなって行く。

驚いた事にコンチネンタル・ホテルRomeの支配人ジュリアスとして、フランコ・ネロ御大が堂々と顔見せ‼英語にイタリア語を織り交ぜ、ジョンに忠告する。カシアンとの堂々巡りに割って入る姿の凛々しい事、渋い事!

ローマにてジョンの戦闘スーツを仕立てたルーカ・モスカ氏は、役のみならず、衣装コーディネーターとしてもクレジット。劇中の活躍同様に、俳優陣の衣装を自ら監修している。

更にコンチネンタル・ホテルNY支配人役のイアン・マクシェーン氏は、珍しくラウンジで狼狽した表情を披露。

前作でもそうだったが、登場する女性陣が揃いも揃って、絵に描いたようなスタイルの良さで大変悩殺的で目移りしてしまう。どうやらほとんど現地のトップモデルさんみたいですね。

手話で啖呵を切る唖者の暗殺者アレスを演じた、ルビー・ローズ氏もモデル出身。首から指先に至るまで入れ墨まみれだが、どうやら彼女自前の物らしい。アレスはやや小柄な印象で、前作でジョンの寝込みを襲ったパリッキ演ずるパーキンス程の印象は無いかなぁ…と思っていたのだが、鏡張りの美術展にて、やたら彼女のをアップでパンするカメラに評価が一変。やっぱりジョン・ウィックに楯突く女アサシンは…最高やな‼

パリッキの例に漏れず、本作でアレスもトドメなのだろうか。手話でやりとりするアレスとジョンの掛け合いが印象的だっただけに、やや残念。

更に更に盟友ローレンス・フィッシュバーンが、NYの情報屋キングを怪演。相変わらず意味不明、かつ回りくどい言い回しに終始している。「銃を提供する」と言いながら実際には、7発しか弾が入って無いキンバーをジョンに手渡す場面が憎たらしくも印象的だった。劇中のキングの言葉がホントなら、カシアンが再登場するかも?

ミリタリーマニアも見逃せない一作。ローマにてガン・スミスならぬまさかのガン・ソムリエが、あれこれ銃をレコメンドするシーンは必見。スーツに見取り図、それに装備と、ジョンが準備を整えるカットに痺れる。

野心をひけらかす様が、ひときわ悪辣だった本作の狂言回し、サンティーノ役のリカルド・スカマルチョ氏ですが、構えていたのはグロックでしょうか?イタリア人なんだし、どうせならベレッタを構えていて欲しかった所。

ローマでは、おぼろげな光が差し込む中の銃撃戦が凄まじい出来だった。特にAR-15のマガジンが、岩壁にガコンッとぶつかる場面が超イカしてる。

それとベネリM4のグリップを肩に載せて一発一発、弾丸をリロードしつつ、刺客が飛び出て来るや否や、拳銃で素早く抜き撃ちするシーンに思わず嘆息。この場面観て、キアヌ・リーヴスが御年52歳って誰が想像できましょうか?

とにかく彼のストイックさに、ただただ拍手のソリッドな二時間だった。

(↑前作のオリジナルスチール・ブック仕様完全版。ボーナスディスクにおける役作りやメイキングシーンは必見。デザインも大変に秀逸でお気に入りです。第二章もおんなじ様にスチール・ブック出ないかなぁと密かに期待。)

キャスト他、情報

原題:John Wick:Chapter2

製作年:2015年

監督:チャド・スタルスキ

脚本:デレク・コルスタッド

製作主導:ライオンズゲート

製作国:アメリカ

登場人物

ウィック夫妻

ジョン・ウィック:キアヌ・リーヴス

ヘレン・ウィック:ブリジット・モイナハン

コンチネンタル・ホテルの面々

コンチネンタル・ホテルNY支配人ウィンストン:イアン・マクシェーン

〃Rome支配人ジュリアス:フランコ・ネロ(‼)

〃NY執務官シャロン:ランス・レディック

〃Rome執務官ルシア:ヨーマ・ディアキート

〃Romeのソムリエ:ピーター・セラフィノヴィッツ

〃Romeの仕立て屋:ルーカ・モスカ

ロシアンマフィアの古馴染み

アブラム:ピーター・ストーメア(‼)

オーレリオ:ジョン・レグイザモ

地元警官のジミー:トーマス・サドスキー

カモッラ・メンバー

サンティーノ・ダントニオ:リカルド・スカマルチョ

ジアナ・ダントニオ:クラウディア・ジェレーニ

サンティーノの忠臣アレス:ルビー・ローズ

ジアナの守衛カシアン:コモン

NYの情報屋

キング:ローレンス・フィッシュバーン

アール:トビアス・シーガル

暗殺者たち

バイオリニスト:ハイジ・マネーメイカー

スモウ:山本山龍太