血を吸う大地ッ!!

映画,ゲーム,ドラマの感想ダラダラ書いてる

'17年リブート版『IT』をザックリとレビュー

レビュー『強面ムスキエティ監督のバランス感覚が光る、怖くて切ない群像劇』

オススメ強度:★★★★★

物語の核となる狂言回しな殺人ピエロ『ペニーワイズ』の凄まじい存在感にばかりスポットが当たり、肝心のあらすじや、本来の主人公であるLoser's Clubはややマイナーな印象があるスティーブン・キング原作の不条理ホラー&青春ドラマの金字塔"It"

 

「Itってどんなおはなしなの?」ってよく聞かれるけど、「となりのトトロ」でサツキとメイがトトロでは無く殺人ピエロに出会っていたら…みたいなお話だよ!って私は周りに紹介してるし、だいたいあってると思う。

本格的な映像化は今回が二度目で、原作の少年編やティム・カリーがペニーを演じた1990年版TV映画の物とおおまかなストーリーこそ同じだが、登場人物達の成り立ちや時代背景を刷新し、現代的な解釈でリブート。

「ペニーワイズを誰が演じるか?」という問題が立ち塞がり、企画初期からキャスティングは難航していたそうな。最終的に決まったビル・スカルスガルドは、その身を削る演者ぶりを発揮し、縦横無尽の大立ち回りで少年たちを嘲笑しまくり、ものすごく目に毒である(褒めてます)

劇中の家族の様子は、あまりにも生々しく、ある意味ペニーワイズより恐怖感がある。特にこれまで単純なDV被害者だったベバリー、剃り込みいれたチンピラの印象が大きかったヘンリーの両者の模様はかなり考えさせられた。ぶっちゃけペニーとベバリーの父親、どっちが怖かったか聞かれるとちょっと悩む…

'80~'90年の著名なタイトルのリメイクorリブートや、実写化企画が一大トレンドとなっている、昨今の映画シーンに一石を投じるような仕上がりで

もうとにかく素晴らしかった(涙)

確かにVFXを多用したペニーワイズの襲撃シーンや全く使いものにならない木偶な大人たちの描写等は、やややり過ぎ感もあったりもしたけど、人に弱みに付け込む胸糞ホラーと悩みに悩む少年少女たちの内面や個性を丁寧に描き、それでいて全体的な構成をまとめ、一本の映画としてキチンと終幕させている。負け犬達が一人、また一人とペニーワイズの恐怖に憑りつかれるシーンは、1カット1カットが精密に撮られ、とても綺麗だった。おかしな話だが仮にペニーワイズ抜きだったとしても、この映画はドラマとして成り立っていたと思う。終始空気を読まないリッチーがキャラ立ち過ぎてもう最高!

確かに怖さはあった物のシュールさが目立ち、やや冗長に感じた'90年版や「はい。今回はここまで~。次回作も絶対観てね!」みたいな終わり方が中途半端な映画に食傷気味だった為、青春ドラマショッキングなホラーをちゃんと両立させ、最後もオチを付けた今作には脱帽の一言。おいJJ観てるか?

割れたガラスで手のひらに傷付け、血だらけの手を繋いで誓いを立てる負け犬達。

宝石のような目を見つめ合わせるビルとベバリーのラスト。

もう泣けた泣けた…とにかく泣けた…そして涙流してる最中「あれ?ホラー映画観てるのに、なんで嗚咽漏らして泣いてんの?」って、頭がめちゃくちゃこんがらがった。

多分、子供と大人が観たら感想がまるで違うのではないか?と感じる。

'17年版のItはホラーでもあり、当時まだ子供だった大人たちの記憶を辿る群像劇でもある。

怖くて、笑えて、すごく切ない。現代に蘇った"It"は、そんな不思議でとてつもなく印象深い、魅力的な映画だった。

劇場で鑑賞出来なかった事を今更ながら後悔中…

ぶっちゃけ初報をWBの公式チャンネルで閲覧した時からあまり本作に期待しておらず、劇場公開されても足を運ばなかった。

結局、auのビデオパスでレンタルして鑑賞。

観終わり、目元を泣き腫らしながら「なんで劇場で観なかったんだろうか」とめちゃくちゃ後悔した。

字幕版を借りるつもりだったが、間違えて日本語吹き替え版をレンタルしてしまう。しかし、声当てにド下手くそなタレントもおらず、演技も自然で物語に没入出来た。

特にジョージ役の女優さん(?)が素晴らしかった。

嬉しい事にVODレンタル特典として、メイキングシーンとキャストのインタビューを収録してくれている。 制作工程的に、ペニーワイズの登場がスケジュール中盤以降だったらしく、驚いた事に冒頭のジョージ襲撃は、一番最後になってから撮影されたとの事。

またペニーワイズの斜視はメイクアップか、CGIか何かだろうと思っていたが、信じがたい事にビル本人が人力で目玉を動かしている!

インタビューの最中、左目だけを外側へ徐々に蠢かす場面に思わずぎょっとした。

その他、ペニーワイズを演じるにあたっての苦労話についても解説。ビル氏の体当たりで緻密な役作りには頭が上がらない。

子役たちの元気な姿や声も聴けてとても得した気分。リッチー役で自身もピエロ恐怖症なフィン君が、井戸の館でのインタビュー最中、"everything scares me..."と思わずぼやく一幕があり、かわいかったです。

自分はたぶん円盤も買うと思いますが、auユーザーならば特典付きのレンタルもオススメします。