血を吸う大地ッ!!

映画,ゲーム,ドラマの感想ダラダラ書いてる

一大SF"運送業"ゲーム『デスストランディング』をザックリとレビュー

コジマプロダクション最新作!『非同期オンライン型の運送インフラアクションシミュ』爆誕!!

death strandingの画像

見出し見て「何のこっちゃ?」と思われるかもしれないが、ホントにそういうゲームだからとしか言いようが無い。小島監督は常々「映画ともゲームとも違うインタラクティブな体験」を提供したいと述べていたが、本作は「あの映像化不可能と言われたハヤカワSF文庫の大作をゲーム化!」みたいな壮大過ぎるスケール感。第三章からのワクワク感がハンパ無い。それとMGSVでクワイエットを演じたステファニ・ヨーステンもそうだったけど、小島監督は相当な目やつれフェチらしく、出て来るキャラクター達は揃いも揃ってとにかく疲れ切った目元である。

舞台は近未来の北米大陸。突如として各地を襲った謎の大爆発で世界に絶滅の危機が訪れ、死者は正しく死ぬ事が出来ずBTというバケモノに成り変わり、更に過激な思想のテロリストまでもが跋扈して、わずかに生き残った人間達を脅かし続けていた。

爆発BTテロ。人々は後に、この脅威の時代を『デス・ストランディング』と呼び、周りに怯えながらも細々と暮らしていた。主人公であるサム(ノーマン・リーダス)は、ヒトも物流も切り離されたアメリカで、なし崩し的に国家再建計画の一助を担う事となる。

序盤でいきなり大統領を火葬して来いと無茶なパシリされるサム君の画像

当たり前な事に感動してしまう奇妙なゲーム

小島監督は恐らく「オープンワールド作るなら荒廃しきった世界で!」というこだわりがよほど強いような気がする。コナミで最後に手掛けたMGSVもそうだったが、今作における世界の荒廃ぶりはその倍以上だ。Vの時は一応各地に集落や要塞が点在し、そこにロシア人やアフリカ系の兵士たちの生活が透けて見えた。

だが、デスストでフィールドに現れるNPCは二人組で移動しているポーターぐらいで、それ以外は基本的に敵しかいない。

それだけじゃなく道らしい道すら存在しない。A地点からB地点に荷物を運べという単純な依頼も、実際に現地に赴くと垂直に近い崖だったり、思ったより川が深くて迂回を余儀なくされたり、雨が降って荷物がダメになったり、挙句BTやミュールの攻撃を受けてスタミナが無くなったりBBが泣き出したり…兎に角、半端な準備で仕事を請け負うと踏んだり蹴ったりの連続だ!

苔むした斜面を無理に登るのはやめようね!の画像

(↑この画像だけだと分かりにくいですが、地面を上から見てる訳では無く、崖を無理に登ろうとしてまっ逆さまに転げ落ちてる所です)

その為、元々NPCの面々が多彩であったり、インフラが充実しているオープンワールドゲーを遊んでるゲーマーはかなりストレスを感じる事だろう。(特に第一章と第二章)

だが、各地でネットワークが開通し、利用出来る建設物が充実して来ると辺りの様子が少しずつ様変わりして来る。ここで改めてご紹介するが、本作は非同期オンラインゲームであり、自分以外の誰かとゆるく繋がる事が出来る。例えば、デスストで遊んでいる他のプレイヤーの足取りが分かったり、誰かが建設してくれた橋やポストがいつの間にか現れたりする。

誰だか分からないけど橋創ってくれてありがとう!の画像

勿論、その逆で自分の建設したモノも誰かの世界に渡り着く事もある。そこで気に入ってくれた人がいれば、自分にいいね!してくれる事もあるだろう。建設に必要な資材が足りない場合は、「ここに資材を投入してくれ!」と看板を建てて協力を仰ぐ事だって出来る。
他者とゆるく繋がり、支え合う事で荒廃していたフィールドが再生され、物流もより活発で便利な物へと上書きされていく。このオンラインゲーとはまた違った繋がりの仕様は今までありそうで無かった為、かなり新鮮に感じられた。その言葉通り、ガチなソーシャルネットワーカーを目指すゲームと言う新ジャンルを開拓したと言っても良いくらいだ。特に「国道の復旧」が可能となる第三章以降は、全員が狂ったようにセラミックと金属とカイラル結晶を貢ぎ始める為、この繋がりの効果がより顕著になる。

たかだか橋とか舗装された道路とか大型トラックを見て、震えるほど感動出来るゲームなんてデスストぐらいなもんだろう。本作は、完全には繋がらないが、決して孤独では無い世界で、あって当たり前のモノに改めて感謝したくなる奇妙なゲームだ。序盤であれだけ怖がっていたBTの連中も、気が付けば片手間で対処出来る様になってるだろう。

最初は逃げるしかないBT達だが…の画像

「コジプロ製作の最新ゲーム!」と書くと敷居の高いイメージがあるかもしれないが、間違い無く手に取って遊んだヒトにしか分からない感覚や面白さがデスストにはある。マジでそこら辺の自己啓発本よりも役立つ体験の連続なので、気になっているが中々手を伸ばせていないゲーマーの方へ「評判を気にせず、まず遊んでほしい!」と伝えたくなる一本だ。

今は亡き"Sillent Hills"は正しく継承されたのか?

五年前。Tokyo GAME Show '14で、とある映像が公開された。

小島秀夫監督×ノーマン・リーダス×ギレルモ・デル=トロ(と恐らく矢野健二氏含め)が結集し、製作が予定されていた"Sillent Hills"の開発イメージムービーだ。


SILENT HILLS Trailer [ TGS 2014] 1080p

この映像と前日端(?)であるP.T.から察するに、開発中のコジプロ内では以下のテーマが課せられていたらしい。

  • 漠然としつつも不快なホラー表現
  • 手形や泥などの汚れの描写や環境の極端な変化
  • 小島監督特有のライティング
  • 生々しい背景
  • "separate reality"(分断された現実)というテーマ
  • それでいて低負荷

コレらに加えて「陰惨なストーリー」も主題だったと思われる。その後の開発が結局どう運び、コジプロがどうなったのかは皆さんもご存知の通り。

ぶっちゃけて言うと遊びたかったのデスストでは無く「新生サイレント・ヒル」の方であり、実際に手で触れて遊ぶまでは不安もあった。しかし、主演のノーマン含め、遊べば遊ぶ程、既に失われた"Sillent Hills"の姿をデスストの中から感じ取る事が出来る。

新生コジマプロダクションは、これら失われた過去のプロジェクトを単なる二番煎じでは無く、新しい物として再建している。発売イベントで大塚明夫さんが涙を流しながら述べていた通り、小島監督を取り巻く色んなつながりが寄り集まって出来上がったのが"Death Stranding"なんだろう。


大塚明夫、「メタルギア」スネークセリフ生披露&小島秀夫監督に男泣き…「DEATH STRANDING」World Strand Tour 2019 TOKYO

小島監督は元々映像クリエイター志望だったハズであり、また独特の説教臭さもあるワケだが、分断された世界をどう生きるか?という現代社会にも通じる疑問を投げ掛けた一大SF『運送屋さん』ゲーム。是非、色んなヒトに遊んで欲しい一本だ。